本日は走り読み

 先日に購入した清岡卓行さんの「薔薇ぐるい」を、飛ばしながら走り読みしていま
した。

薔薇ぐるい (1982年)

薔薇ぐるい (1982年)

 もともとはこの本の帯に「中年の大学教授、詩を愛好する女子学生」という文言が
あったので、これは作者の経験が投影されているに違いないという興味で、この小説
を購入したのですが、そういう興味本位の読み方は半ば裏切られ、そして新たに得る
ところもありです。
 まずは興味本位のところでいきますと、55歳の妻に先立たれた大学教授が、教え子
である22歳の女子学生に恋愛感情をいだいて接触したとしたら、へたすりゃアカハラ
で訴えられる話であります。この大学教授は、ぐっと自制して危ない行動は取らない
のですが、それでもあれこれと妄想をして、この学生との結婚を夢想したりするので
すね。もうすこしで渡辺淳一さんの作品世界にはいりそうですが、残念ながらそうは
ならずでした。
 読んでいて面白いのは、戦中期間の日本プロ野球の話題となるところ。清岡さんは
プロ野球の世界で仕事をしていたわけですから、野球についての蘊蓄をかたるところ
は、非常に面白いものです。作中でも書いているのですから、どこかにプロ野球
ついてのエッセイは存在するのでしょうね。清岡さんのプロ野球についての文章を
まとめて読んでみたくなりました。
 この「薔薇ぐるい」は、後年になって作中に引用されている「薔薇」についての
詩をまとめたものとあわせて復刊されました。まさに作中の大学教授がのぞんだ
での出版となったことになりです。
薔薇ぐるい

薔薇ぐるい

 この小説を読んでいて一番関心をもったのは、主人公が育てているバラの手入れ
についてのくだりであります。これについてのところを読んでいましたら、清岡
さんは、バラを育てているのだなということがわかります。季節ごとに行う作業に
ついての記述を読んでいても、納得できることです。主人公の庭にはバラの木が
二十本ほど植わっているとありますが、これは作者の庭に同じでありましょう。
作中にはバラの木は十年から二十年は大丈夫とあるのですが、清岡さんが亡くなっ
て十年以上経過して、残したバラの木はどうなっているのでありましょう。