高い本、安い本

 本の値段の高い、安いというのは本当に難しいことであります。
 これなら値段が高くともしょうがないなと思うのが普通でありまして、逆に値段が
安いと、それはどうしてなのかなであります。
 最近の書店でよく見かけるもので、函入りにもかかわらずずいぶんと値段が安いな
と思うのは、次のものであります。

昭和天皇実録 第一

昭和天皇実録 第一

 版元は東京書籍となっていますが、どう考えてもこの値段で作れるものではありま
せんので、これはスポンサーがついていてできることですね。
 先日に新聞広告を見ていましたら「大正天皇実録」が復刻するとありましたが、も
ちろんセットで、かなりの値段がしていました。
大正天皇実録 補訂版 第一 明治一二年~明治三三年

大正天皇実録 補訂版 第一 明治一二年~明治三三年

 すこしでも流通しやすくできるようにと故人が残した貯金を基礎資金として刊行さ
れた本のことに小沢信男さんが書いていると、池内紀さんが「亡き人へのレクイエム」
で紹介しています。
亡き人へのレクイエム

亡き人へのレクイエム

小沢さんの文章は「本の立ち話」に収録の「菅原克己全詩集由来記」というものです。
本の立ち話

本の立ち話

 ここでは、池内紀さんの文章から引用です。
「すっきりとした装丁の美しい本だった。五百頁をこえるのに、どうしてこれだけの
値段でできたのか不審に思っていたが、挿みこみの栞に小沢信男さんが、焼け跡から
出てきた(注 菅渡克己さんの自宅が焼け、未亡人がその火事で亡くなられた)郵便
貯金通帳のことを書いている。サンチョはドン・キホーテを案じて、小さなお金を
積み立てていた。」
 このようにしてできあがる本もあるのですね。これでも高いと感じる人もいるので
しょうが。
菅原克己全詩集

菅原克己全詩集

 通常の出版には、そのようなことはありませんので、いきおい本を作るのにかかった
経費を勘案して定価をきめることになりです。
昨日に届いた「みすず」の巻末の出版案内を見ておりましたら、次のものがありました。
シベリア抑留関係資料集成

シベリア抑留関係資料集成

 みすずでは、これ一冊のために「内容見本」を作成したとあります。この本を必要と
する人は、どのくらいいるのかですが、ものすごい時間と手間がかかったものであると
いうことは、出版案内の文章をみてもわかります。A5版 1008頁 18000円税別
とあります。これは高いのか、安いのかです。もちろん必要としていた人にとっては、
圧倒的に安いということになるのでしょう。