なんとか読了

 本日、大西巨人さんの「神聖喜劇」の最後にたどりつきました。
 読み始めたのが8月24日ころからでしたので、ずいぶんかかりましたが、一月一冊と
いうのが目標でしたので、まずまずです。
 すごい小説ですとか、頭にがつんとくる大傑作ですとか、感動しましたといえれば
よろしですが、とにかく不思議な読後感の長編小説です。小説というのは物語だろう
よと思ったりもするのですが、これはもちろんそういうタイプの小説ではありません。
 昭和の時代にあって、いまなくなっているものの一番は徴兵制と戦争でしょうか。
その時代(ということは徴兵制があったころ)の男性にとっては、成人になれば兵隊
となることは避けられなかったわけです。
 どうせ兵隊にならなくてはいけないのであれば、最初から幹部となる道に行こうと
いうことで、早ければ小学校をでるとすぐに幼年学校にはいるというのが大エリート
養成のコースでした。そのほかにも幹部への道はいろいろとあり、旧制で高等教育を
受けた人は、幹部養成の道が開かれていました。旧制高校や大学を終えたりしても、
そうした幹部への道を選ばずに、二等兵として兵隊になったのが、この作品の主人公
となります。
 すこしでも組織のなかで良くありたいと思えば、一番下の職であるよりも、すこし
でも上のほうがいいのでありますが、主人公は思うところがあって二等兵となり、
一番下で横並びの軍隊生活を始めるわけです。
 旧制の学校教育を受けて、このような道を選ぶ人は、よほどの考えの持ち主となり
ますでしょう。このような人が、旧軍にどのくらいいたかはわかりませんが、極めて
珍しいでしょう。
 現代社会においても、軍隊組織を模範として運営しているのではないかと思われる
会社が見受けられますが、こうした会社に一番下の職階で勤めたりすれば、この小説
と同じような体験をすることになろうと思いますが、そのときに主人公のように振る
舞うことができますでしょうかね。