近況報告

 一月一冊のペースで読み続けている「神聖喜劇」の、最近の状況であります。
ほぼ一ヶ月前に第三巻目にはいったのですが、あと百ページくらいで三巻目も読了で
ありますので、なんとかひと月一巻は守れるでしょうか。

神聖喜劇 (第3巻) (光文社文庫)

神聖喜劇 (第3巻) (光文社文庫)

 作中の主人公が、どのくらい作者の人となりを反映しているものかはわかりません
が、けっこうこの主人公というのは、面倒な人であるようでして、当方が仮に上役で
ありましたら、どのように向き合うでしょうね。
 軍隊というのは階級社会でありましょうから、なにも好きこのんで最下級の兵にな
ることはないのですが、旧制の大学をでて幹部への道を選ばず、二等兵となる人が
いたのですね。もちろん、これは思うところがあってのことですが、どちらにしても
そういう人たちは、そうとうな強者であります。
「元来ときどき私は、一般の人人が苦もなく理解する類の事柄(ないし言語表現)に
ついて、突拍子もない解釈(誤解)をすることがあった。・・
 彼らの会話内容一般に、私は、めったに関心を持たなかった。ただ、その中で二度
か三度か潮田が『コシミンテキ」という語(形容動詞)を使ったことに、私は、心を
留めた。私は、『コシミンテキ』なる成語を知らなかったのであり、それだからその
意味を合点し得なかったのである。しかし明石は、たやすく呑み込んだとみえ、別に
問い返すこともしなかった。
 そののち数日間、私は、『コシミンテキ』なる語について、あれこれと調べたり考
えたりしたが、よくはわからなかった。『テキ』は「的」であろう、と私は推定する
ことができた。『コシミン』は、どうにも私に見当がつきかねた。潮田の用法におい
て、その語は、ある人間の性格または思想または生活に関する消極的・否定的価値判
断を著しているらしかった。『コシミン』は西洋単語か西洋人名かであろう(日本の
言葉ではあるまい)、とやがて私は推測した。とはいえ、なかなか私は、適切な西洋
単語または西洋人名を思いつきも見つけもすることができなかった。」
 思わず笑ってしまうくだりでありまして、考えようによっては、こういうユーモア
があちこちにちらばっているのですが、もちろん作者が読者を笑わせようとしてこう
いうことを書いているわけではないですね。
 もちろん「コシミン」というのは、「小市民」の読みでありますね。この「コシミ
ン」というのを、作者はどのような西洋単語であるかと推理して、調査をするのです
が、ここのところも抱腹絶倒であります。くわしくは「神聖喜劇」第三巻346ページ
をご覧くださいです。