夏日に届かず

 日ごろ涼しい当地も、昨日までの数日は最高気温が28度くらいとなり、夏日を記録
しました。
 本日も午前中から太陽がでてぐんぐんと気温があがったように思えたのですが、最
高気温は24.8度ということで夏日になりませんでした。本日は全国的には猛暑日を記
録したところが多く、そこでは最低気温が25度を超えたりしていますので、こちらの
涼しさは別世界のものです。(北海道全体が涼しいわけではなく、北海道でも内陸部
はそれなりに気温があがっています。)
 あいかわらずのつまみ読みで、手近におかれているものを適当にとって、ページを
開いています。丸谷才一さんの「星のあひびき」を見ていましたら、「民族の本音」
という文章がありまして、これは2008年講談社文芸文庫の新聞広告のために書かれた
小文なのですが、それには次のようにありです。
「近代日本文学は、西洋文学の多彩と充実は持合せず、日本古典文学の洗練と高雅は
欠くものの、近代と日本といふ身近な条件二つが重なるせいか、妙に切実で胸を打つ。
危機に際会したときの民族の本音が詰ってゐる。たとへば、『白秋青春詩歌集」、
谷崎潤一郎『金色の死』、徳田秋声『あらくれ』、古井由吉『山躁賦』など、みな
わたしの枕頭の書、車中の好伴侶である。」
 このような文章を見ますと、とりあえず谷崎の「金色の死」が読みたくなることで
ありまして、さっそく古い新書版谷崎全集であたってみたのですが、これの目次では
見出すことができずでありました。新書版全集は、谷崎生存中にでたものでして、刊
行以降に発表されたものとか、谷崎の意向で収録されなかったものがありまして、
この作品名で検索をかけてみました。
 なんと谷崎の「金色の死」というのは、昔の全集には未収録であって、これを手軽
に読むことができるようになったのは講談社文芸文庫に収録されたことによるという
ことがわかりました。そうでなければ、丸谷さんの講談社文芸文庫の広告にあがって
くることはないですね。

金色の死 (講談社文芸文庫)

金色の死 (講談社文芸文庫)

 本日は「金色の死」を探すために手にしていた新書版「谷崎全集」からいくつかを
読むことになりました。どこを開いても面白いのでありますよね。