ひさしぶり鮭児書店 2

 それにしても「佐藤亜紀は世界文学クラスの才能である」という見出しには驚くこと
です。見出しは新聞社がつけるのですが、もちろん、豊崎社長の文中にあるものです。
 それは佐藤亜紀さんのデビュー作である「バルタザールの遍歴」を読んだ時のことと
あります。
「深い教養と知識に裏打ちされた物語構築力の強靱さとしなやかさ、硬質でありながら
同時に甘やかでもある独特の文体、美貌の麗人から小悪党まで実に見事に作品世界の中
で活かし生かす人物造形の妙。世界文学クラスの才能の出現に、度肝を抜かれ、欣喜雀
躍したのを、つい昨日のように思いだすことができます。」

バルタザールの遍歴 (文春文庫)

バルタザールの遍歴 (文春文庫)

 佐藤亜紀さんという小説家、名前は知ってはいるものの、いまだ作品を読んだことは
ありません。「世界文学クラス」の作品といわれますと、ほんとかなと思ってしまうの
ですが、ここは豊崎社長を信じることといたしましょう。
 そもそも豊崎社長のいらだちと怒りの矛先は、当方もその一人である「世のオヤジど
も」にむけられているのであります。それはどういうものでありましょうか。
 文壇の重鎮たちの文学観が前時代的であって、日本人が外国を舞台にした小説を書く
ことに意味を見いださないことにいらだっているのであります。
「その偏狭かつ愚かしい輩どものせいで、正当な評価を受けないでいる作家が佐藤亜紀
もし佐藤亜紀がイギリスに生まれていたならブッカー賞を、フランスに生まれていたな
ゴンクール賞を・・・つまり名だたる文学賞を受賞したやもしれぬ、それほどの器で
あるにもかかわらず、日本の文学界は黙殺。出版業界に有象無象と存在する、才能の遇
し方を知らない失礼なオヤジどもに、中指を突き立てたい店主なのです。」
 失礼なオヤジとしては、すこし反省をしつつ、佐藤亜紀さんの本をさがしてみること
にいたします。
吸血鬼

吸血鬼