「図書」5月号

 岩波「図書」5月号が届いておりました。
 今月の冒頭には「伊藤若沖、ジョウ・プライス、そして私」という辻惟雄さんの文章
がおかれています。すごい人気の若沖でありますが、当方はいまだ見る機会に恵まれて
おりません。若沖ブームの火付け役による回顧的なものですが、当方はこれまで辻惟雄
さんのものを読んだことがありませんでしたので、初めて知ることばかりでした。
 若沖の展覧会を紹介するTVなどをみましたら、プライスコレクションという表示がで
てくるのですが、そのコレクションをしたジョウ・プライスさんについても言及されて
いて、たいへん興味をひかれました。
 そのなかで印象に残ったのは、次のくだりです。
「ジョウ・プライス氏は、変わった若い学者が若沖を熱心にやっていると聞き、結婚直
前のエツコさんの案内で、文化財研究所に私を訪ねてきた。お二人は熱心に私を説得す
る。『私たちはオープンです。見たい人には誰にでもお見せします・・』実際そのとお
りになった。日本のコレクターには到底考えられない寛容さで、プライス氏は、どれほ
ど多くの来訪客に、自ら取り出した江戸絵画のコレクションを見せてこられたか。」
 「日本のコレクターには到底考えられない」とありますので、若沖絵画がこのように
知られるようになったには、ジョウ・プライス氏のこうした姿勢があったのですね。
 その一方で、辻さんはこの文章の終わり近くで、次のようにも記しています。
「最近の度重なる若沖画の展示は、保存の点で望ましくない。若沖の全貌を知るための
このような機会は、今後当分訪れないだろう。」
 そういえば今月上旬に上野へと桜見物にいったときにいただいた「うえの」4月号は、
「生誕300年記念 若沖展」を特集していました。4月22日〜5月24日まで東京都美術館
で開催です。この規模の展覧会は、当方の生きているうちには、もうなさそうでありま
すね。どうも、今回も縁がなさそうでありますが。