借りている本

 旅行に出る前に図書館から借りている本が、案の定で読むことができていません。 
 図書館本を旅行に携行するなんてことはルール違反でありますので、自宅において
戻ったら読んでやりましょうと思っていましたが、旅行の余韻と、連日の相撲が熱戦
続きなものですから、それに気がとられて、そろそろ返却期限がせまってくる頃に
なって、あわてて手にしています。
 ちなみに借りている本の一冊は、次のものです。

 二年ほど前に刊行されて話題となったものですが、どうやら最近になって図書館に
はいったようです。以前より興味があったのですが、ちょうどタイミングよしで見つ
けましたので、ありがたく借り出しをしました。
 富士川家というのは、代々医者の家系だそうで、著者の祖父にあたる方は「日本医
学史」を著した学者として著名であり、父親はドイツ文学者ではありますが、それに
とどまらず後年にあっては、菅茶山など江戸後期の詩人たちについての著作で有名と
なった方です。
 どうしてリルケなどをテーマにされていた方が、このように漢詩文に関する著作を
残されたのか、それを読み解くキーワードが「文人学者」なのでしょう。
いまとなっては絶滅したのかもしれない響きが「文人学者」という言葉にはあります。
人文学は大学では不要であるなんてことが、まじめにいわれる世の中でありまして、
そんななかで「文人学者」は生き延びるのが難しいことでしょう。
 この本のプロローグを見てみましたら、「さまざまなジャンルの交差する、ゆるやか
に形成された一種のネットワークというか、教養共同体と言ってもよいのかもしれない。
だが、そのような教養共同体も、世代が移りかわるとともに忘れ去られているのが現状
だ。」という言葉がありました。
 著者である富士川義之さんは1938年のお生まれで、その富士川英郎さんは1909年生
まれだそうです。