図書館に通う 

 図書館から借りてきた宮田昇さんの「図書館に通う」を読んでいます。

 この本の副題は「当世『公立無料貸本屋』事情」となっていました。
仕事を退いてから図書館を頻繁に利用するようになったことで、「みすず」から図
書館について書くことを求められたとのことです。
 前書きには、次のようにあります。
「娯楽として図書館でタダ読みしている私には、忸怩たる重いがあった。そのことも
底流にあって、街の図書館通いの随筆を書いてみようと思った。・・・・
 以下本文は、図書館のことだけでなく、本にまつわるとりとめない雑感を書いたも
のだが、図書館の一利用者の視点から離れないように心掛けた。
 といっても私には、編集者、海外著作権実務者、わずかな期間であったがフリー
ランスの物書き、翻訳などを生業とした六十年余のキャリアがある。一利用者に徹し
切れたかどうか、また『図書館は公立無料貸本屋ではいけないのか』という問いに、
結果として、答えられたかどうか、その自信はない。」
 という前書きで、この本は始まるのですが、「図書館」とそこの本についてのエッ
セイが17本ありです。
 これのエッセイには話題を提供してくれる「旧友S」さんという人が登場します。
このSさんとはどのような人であろうと思いましたら、あとがきに「本書の随所に出
てくる旧友Sとは、坂井利夫である。六十余年変わらぬ交友をつづけたが、彼の私へ
の手紙のほとんどは読書にかんしてであった。その交友がなければ、本書は生まれな
かっただろう。」とありまして、そのキャリアが紹介されていました。
 坂井利夫さんは、1960年、ソニーに転職して財務担当として会社を支え、専務から
常勤監査役をつとめた方だそうです。会社をやめてから放送大学大学院にはいり、
安岡章太郎」についての論文をかいて修士となっているとのことです。
 ちなみに、この本で最初に旧友Sさんが、宮田さんに疑問を呈しているのは、電子
辞書版「広辞苑」である人のことを検索したら、この方が収録されていないという
ことであります。
 その人物は「荒正人」さんであります。最近は、あまり話題になることがない批評
家ですが、この方の名前に、宮田さん、坂井さんが拘るのには理由があります。