読んでいる本 4

 本日も一番時間をかけて読んでいたのは原武史さんの「皇后考」でありました。
 箸休めのようにして手にしていた本についてです。これも年が明けてから購入した
ものとなります。

文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)

文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)

 元版は、安岡章太郎さんの死後半年くらいに刊行されたものです。これが安岡さん
最後の新刊であるかと思ったときに、美しい本であったこともあって購入しようかと
一瞬迷ったのですが、「吉行淳之介の事など」と副題がついていて、吉行さんについ
ては、あまりなじみがないせいもあり、結局は購入せずでありました。
 今回文庫となったことで、気軽に購入できるようになりました。安岡さんの本が
そんなに売れるのかなと思いながら、こうした普通の廉価な文庫本で刊行される新潮
社に感謝しなくてはいけません。
 この本には、安岡治子さんによる「あとがきに代えて」という文章がありまして、
これがありがたいことです。安岡さんの知られざる一面が、家族の視点から描かれて
いました。
 それにしても、歳をとってからの文章というのはさびしいものであります。特に、
追悼文とか亡くなった方への思い出が多いので、なおのことです。
 遠藤周作さんへの弔辞の冒頭部分の引用です。
「友人を裏切ることは後ろめたく、友人に裏切られることは腹立たしい。しかし、
この歳になってみると、そんなことはどうでもいい。何よりも耐え難いのは、古い
友人に死なれることだ。私はさきに吉行淳之介を失い、いままた遠藤周作を亡くした。
なお、これからもつぎつぎと多くの友人たちが幽明界を異にして行くのは、明らかな
ことである。」
 これは96年に発表のもので、亡くなったのは2013年、最晩年の七、八年は文章を発
表することは適わなかったと、治子さんの文章にはありました。
こうして見ると、体調を崩して文章を発表できなくなったことは、安岡さんにとって
よかったことなのかもしれません。