長谷川さんの葉書 3

 当方がいただいた長谷川四郎さんからの葉書を見ています。
 最初のものは1977年1月2日消印のものですから、長谷川四郎さん67歳で、当方は
25歳でした。先日も書きましたが、どこの誰かもわからないものに、丁寧な返事を
下さるというのは、なかなかできることではありません。それから約40年が経過し、
当方がその時の四郎さんと同じような年格好になっているのですが、当方のところ
に、自分の子どもよりも若い未知の人から来信があったら、どう対応するでしょう
か。
 最近は全集などがでても、書簡とか日記は収録されることがなくなっています。
特にいまは郵便による書簡が、eメールにとってかわられていますので、書き文字に
よる書簡というのは、これからますます稀少となるでしょう。
 そんなこんなことを思いながら、味わい深い長谷川さんの葉書を楽しんでいるの
ですが、その葉書に、次の文面がありです。(消印 1977年11月29日 )
「お手紙ありがとう、引越しも済み、どうやら落ち着きました。レコードを買って
くれてありがとう、わたしとしては”かむしゅばきの歌”はいい歌だと思っていま
す。Seaside GanはHasegawa Gennkichiのことです。彼は今はギターはやりません
高校時代やってました。その時つくった曲に私が言葉をつけたのが、あの沖縄の歌
です。詩はもともと音声の芸術ですので、こんどまた詩集を出すとしたら、それに
レコードをつけたいものだと思っています。テレビ的歌謡には毎日のように拒絶
反応をおこしています。」


 高頭祥八さんの朔人社から「ギターをとって弦をはれ」がでて、それを購入した
という葉書をさしあげた時の返信となります。引っ越しとあるのは、それまでお住
まいであった上北沢から同じ世田谷区内南烏山へと転居したことをいっています。
 これにあった「かむしゅばきの歌」がいいとおもったのですね。この歌は、四郎
さんが編集していた「自由時間」に掲載されたものでした。
「ギターをとって弦をはれ」は「兵隊のバラード」の一節で、四郎さんの葬儀の時
に歌われたものでした。どちらも作曲はSeaside Ganさんこと長谷川元吉さんでし
た。
 このレコードで演奏されているのは、劇団音楽座の皆さんで、たしか桐朋短大
演劇コース(四郎さんが教鞭をとっていた)の卒業生たちだったはずです。
 書簡中にある「こんどまた詩集を出すとしたら、それにレコードをつけたいもの
だと思っています」というのは、78年にでた「一つ目小僧の歌」青土社刊という
詩集で実現しました。