書簡集を待望

 河出書房からでた福島紀幸さんの「ぼくの伯父さん」を読んでいての

感想です。本日の表題とした「書簡集を待望」というのは、もちろん長谷川

四郎さんが発したり、受けたりした手紙に関してであります。

 四郎さんの書簡は、これまで未公開でありましたが、いまからちょっと前

古書市場に四郎さんの書簡がどっとでて、これはたいへんなことになる

なと思ったのですが、幸いなこと古書店の計らい(?)で、四郎さんの編集者

である福島さんの管理下におかれることになりました。

 今回の「ぼくの伯父さん」には、四郎さんの手もとに残っていた書簡が

活用されています。もちろん、それははじめてオープンされるものとなりです。

 たとえば、福島さんの著作にある、次のようなくだり。

「フリーデナウの下宿から、東京の古い友人・吉田秀和へ手紙を出した。

ちょうど、吉田秀和が前の夫人と離婚して、ベルリン子のバルバラと二度目

の結婚をした頃で、結婚相手のバルバルの家はフリーデナウの近くだという

ことだった。吉田秀和はすぐに、『なつかしい所に住んでいますね』と返事を

くれた。」

 吉田秀和さんと四郎さんは、共通の友人を通じての友人でありまして、雰囲

気は違うのですが、親しい関係でありました。吉田さんが長谷川四郎さんの

書簡を保存していたかどうかはわかりませんが、四郎さんと吉田さんの往復

書簡であれば、是非とも読んでみたいと思うのは、当方だけではないであり

ましょう。

 最近は書簡集なんておよびでないからな。

ぼくの伯父さん: 長谷川四郎物語

ぼくの伯父さん: 長谷川四郎物語