本日の読書

 昨日の夜から深沢夏衣さんの「夜の子供」を読み始めています。

夜の子供

夜の子供

 中編小説で173ページほどのものですから、すぐに読み終わりそうなものであります
が、よく言えば丁寧に読んでいるせいもありまして、ゆっくりゆっくりです。
1992年の「新日本文学」に掲載となったものということですから、発表されてからすで
に二十年以上もたっていますが、作者四十九歳の作品ということもあり安心して読む
ことができます。
 深沢夏衣さんの名前は初めて聞いたなと思って、拙ブログをチェックしておりました
ら、昨年の今頃に、小沢信男さんが「みすず」表紙裏の「賛々語々」で2014年物故者の
お一人として深沢さんのことを記しているとアップしておりました。まったくこのこと
は忘れているのですが、まあ忘れてもブログにアップしておきましたら、記録が残って
いて、安心して忘れることができることです。
 それから一年たらずで、深沢夏衣さんの作品集が刊行されるのですから、深沢さんは
良いお仲間をお持ちであったといえるでしょう。
 本日読んでいたくだりで、傍線をひこうと思ったところです。
「フリーの校正の仕事は彼女の性に合っていた。時々仕事が途切れ、そんなときには不
安が掠めるが、誰とも口をきかずにひとりで閉じこもるようにしてする仕事は、彼女に
深い安堵感を与えた。仕事に疲れるとベッドに寝転んで好きなレコードを聴く。庭の草
花を眺めて楽しんだり、天井板のさまざまな木目の模様を、自分の好きな動物や雲や炎
の形になぞらえて遊んだりもした。」
 この時、主人公はフリーの在宅校正者でありました。これを読んだときに、テープ
起こしや校正を自宅でやっていた、今は亡き友人が、この主人公に重なってきました。
主人公は、このあと転職するのですが、友人は亡くなるまでフリーでやっており、猫と
暮らしておりました。