本日の読書 2

 昨日に引き続き深沢夏衣さんの「夜の子供」を読みついでおりました。

夜の子供

夜の子供

 先日に掲げた内容見本には小沢信男さんの推薦の言葉がありましたが、昨日に記し
ましたとおり、小沢さんは『みすず』表紙裏の『賛々語々』で2014年物故者のお一人
として深沢さんのことを取り上げていました。この「みすず」2014年12月号が見つか
りましたので、深沢さんにかかわるところを、無断で引用です。
「後輩深沢夏衣が急逝の報を四月一日に聞く。エイプリルフールなのに真実で、すで
に身内で葬儀もすませたという。長篇『夜の子供』に新日本文学賞を贈ったのは
二十二年前の事ながら、この作品は、日本国籍をもつ在日朝鮮人の著者が、在日二世
たちの多難な諸相を的確に描いて新境地を拓いた。在日一世たちの作品が逞しく明る
いのにくらべて、二世はいっそ複雑な状況下に生き抜かねばならぬ。その存立の根拠
は<私>が決める。
 近代の文学の、これは根本の課題でもあろうか。日ごろはおだやかで、毅然として、
そして可憐な気配のひとでした。」
 深沢さんは1943年のお生まれでありまして、亡くなったのが2014年ですから、70歳
となったくらいでしょうか。1943年生まれの女性というと、どのような方がいるのか
と検索をかけてみましたら、深沢さんの「夏の子供」の作品中でも歌が流れてくる
歌手 ジャニス・ジョプリン、そして歌手の加藤登紀子さん、この「夜の子供」が刊
行された年には亡くなってしまった作家 干刈あがたさんなどが同年生まれとわかり
ました。
 「夜の子供」で描かれるのは70年代はじめ「在日朝鮮人むけの季刊雑誌」編集現場
であります。在日朝鮮人といっても、当然のことながら多様な考え方が存在するわけ
でありますし、そこに飛び込んだ主人公は、在日二世ではありますが、子どもの頃に
親に従って日本国籍となっているのでありました。
 在日一世と二世、そして二世でありながら国籍日本の主人公らが、朝鮮半島の北と
南の間で、南でも当時の朴政権に対してのスタンスで、翻弄されながらも、なんとか
自分らしくありたいという物語であります。
 作中の主人公は28歳とあり、その当時の作者は四十代後半でしょうから、ちょうど
当時の自分を見つめるには良い時間の経過かもしれません。
 「夜の子供」の帯には、次のようにあります。「思うまま自分を語る そんな言葉
を見つけたい」
 深沢さんは、この作品で「新日本文学賞の特別賞」を受けられたとのことです。