堀江さんとギベール

 エルヴェ・ギベールの「赤い帽子の男」を読みました。200ページほどの中編であり
ますので、読むのはそんなにたいへんではないと思っていましたが、思ったよりも時
間がかかりました。

赤い帽子の男

赤い帽子の男

 ギベールさんの小説では「ぼくの命を救ってくれなかった友へ」からはじまるいくつ
かの作品は、自らのエイズを取り上げたものであります。
ぼくの命を救ってくれなかった友へ (集英社文庫)

ぼくの命を救ってくれなかった友へ (集英社文庫)

 「ぼくの命を救ってくれなかった友へ」の紹介文は、次のようになっています。
「フランス文学の将来を担う気鋭の作家として凄まじいスピードで次々と作品を発表し
ていたが、エイズに懸っていることが発覚し、フランス中に衝撃を与える。絶望の中、
エイズと闘う自分自身の姿ーホモセクシャル、乱脈極まる愛欲の日々ーを一切合切さら
けだして描いたのがこの作品である。1991年12月27日、36歳の誕生日の直後に
ギベールは死去。」
 この売り文句をみましたら、これは当方の好みの世界とは違いますですね。
ということからいうと、ギベール作品で最初に手にしたのが「赤い帽子の男」というの
は、あんがいラッキーな出会いであったかもしれません。
 たぶん、それは翻訳をされた堀江敏幸さんにとっても、そうなのでありましょう。
なんといってもこの翻訳作品が、堀江さんにとって最初のものとなったのでありますか
らして、愛着がないということにはならないと思うのであります。
 もともとは、堀江敏幸さんの「仰向けの言葉」に収録された「スターキングはもう作
られてはいませんと彼は言った。」を読んでいくための、当方にとっての準備の一冊目
が、このギベール「赤い帽子の男」でありました。
仰向けの言葉

仰向けの言葉