本日の夕刊から

 本日の朝日新聞夕刊を見ておりましたら、社会面に「韓国、金石範氏の入国拒否」
という見出しが目にはいりました。
 記事には、金石範さんの「火山島」の全巻翻訳が韓国で出版されることにあわせ、
ソウルで16日にある記念行事に出席する予定で、そのための韓国訪問を申請したと
ころ、韓国政府が入国を拒否したとあります。
 これに続いて、次のようにありです。
「金さんは今年4月、韓国政府や地元自治体もかかわった平和賞の授賞式で、事件
当時の政権に疑問を投げかけるスピーチをした。これに対し、韓国の保守団体や
一部メディアが授賞取り消しを求めるなど反発したため、今回の入国拒否につな
がったのではないかとみられている。」
 4月の平和賞というのは「第一回済州4・3平和賞」というものです。これに韓国
政府がどのようにかかわっているのかは、承知しておりませんが、この時のことは、
当方のブログでも話題にしたことがありました。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20150406 )
 4月に入国したのは済州島でありました。当方は、済州島に入国できたというだけ
でも驚いたものです。「第一回済州4・3平和賞」を金石範さんが受けたということ
は、すこし風向きがかわったかなと思いましたが、それはあくまでも済州島での話で
あるようです。
 済州島がおかれている状況と、日本での沖縄にはいくつかの共通点があるように
感じています。仮に現在の沖縄県が「平和賞」というのをつくって、それの一回目
に選ばれる人は、中央政府から見ましたら、好ましくない人間である可能性が強い
かもしれません。そうした時に、日本の政府は、どういう対応をとるでありましょ
う。
 先日に天神さんで購入した金石範さんの「口あるものは語れ」には、次のくだり
がありました。
「もともと韓国へ出入りできない私にとっては、(韓国への)旅行案内をポケット
に入れて持って帰ったところで、ほんとうは何にもならないのだ。しかし、私は
それを手に取る。表紙の民族衣装をつけた若い女性の写真がまず私の眼を引く。」
 1974年に発表した文章「わが虚構を支えるもの」からの引用です。
金さんが韓国に出入りできないのは、金さんの国籍が「朝鮮」であるからです。
その昔に、韓国へのふるさと帰りをするために、国籍を「朝鮮」から「韓国」へと
変える方がいたとのことです。金さんは、朝鮮民主主義人民共和国とは距離をおく
ことになってしまっているのですが、それと国籍を「韓国」とすることとは別の
問題です。それが「現実には済州島は私の手の届かぬ遠いところにあるのだ。」に
つながるのですが、済州島に手が届いた4月から半年で、再び手の届かぬ遠いとこ
ろになるのでしょうか。
 金石範さんは10月2日で90歳となりました。