訃報あり

 いまほどネットを見ていましたら、長田弘さんがなくなっていたとの報道がありま
した。亡くなったのは5月3日で、ちょうど一週間が経過していたことになります。
つい最近に全詩集がでたかと思いますが、これは病床にあった長田さんへのエールと
なる出版でありましたか。

長田弘全詩集

長田弘全詩集

 この宣伝を「みすず」5月号で見たのですが、みすずから全詩集というのに違和感
を感じたのですが、今は晶文社よりもみすず書房のほうが縁が深くなっていたので
しょう。
 といいながらも、当方はほとんど長田弘さんの詩にはなじみがなくて、長田さんに
恩義を感じるのは、美術出版社から晶文社にかけての編集者としての仕事と、「私の
二十世紀書店」からの読書エッセイでありました。手近にあった中公新書版「私の
二十世紀書店」のなかをのぞいています。ここからあとがきの冒頭を引用です。
「この本はエッセーとして書かれた。二十世紀という時代の読みかたを、一人のわたし
に親しく教えてくれた本たちについての本である。わたしがのぞんだのは、これらの
本が語ってくれた言葉によって、言葉のむこうに目撃した、世界の同時代の感受性の
光景を書きとめておきたいということであった。そうすることによって、二十世紀と
いうわたしたちの時代のなかに、このような本があったという記憶を、一人の読みて
として確かにしておきたいとおもった。」
 「一人の読みて」が、この世から姿をけしました。