中公新書の森2

 「中公新書の森」というのは、中公新書が2000点となったのを記念してでた
ものですが、非売品でコストをおさえたせいか、ざら紙が採用されていて、手にすると
意外なほど軽いのです。むかしもこのようなポケット本があったな。上質紙をつかった
中公新書とくらべると重さが半分以下です。このざら紙でありましたら、何十年も
たつと劣化してぼろぼろになるのかもしれません。
 中央公論社の本の装幀に白井晟一さんが登用されていたといいますが、建築家で
本の装幀をした人というのは、ほかにもいるでしょうか。ほとんど思いうかばない
ことですが、白井晟一さんが中央公論社に残したデザインで、いまも利用されている
ものには、中公新書だけでなく、中公文庫もそうでありました。そのむかしは、文庫も
新書も白井晟一と記されていましたが、最近は基本デザインがかわっているせいも
あってか、白井晟一さんの名前は見当たりません。これはすこし淋しいことです。
しかし、白井晟一さんが描いたイラストは、いまでも中公新書、文庫をかざっています。
 自分で購入した中公新書の一冊目は何であろうかと思い出そうとしています。
父の書架には岩波新書はありましたが、中公新書は記憶にありませんので、当方に
とってのはじめての中公新書は、自分で購入したものであるように思います。
この「中公新書の森」にある川上弘美さんのエッセイには、次のようにあります。
「 最初に自分で買った新書は、『宦官』である。
  中学のころだった。」
 
 中学のころに自分で新書(これを見ると岩波よりもさきに中公新書と読めます。)を
購入というのは、相当に早熟なことであります。「即物的な興味だった。」とあり
ますが、それにしても中学で中公新書を購入ですから、おそれいります。
 小生はいなかの高校生でありましたので、まわりをみわたしても岩波新書を読んで
いたひとはあるでしょうが、中公新書を愛読という人は見かけませんでした。
 刊行リストをみて、最初に購入した一冊といえば「反抗の原初形態」であるようです。
ついで「マグレブ紀行」「マザーグースの唄」という具合に続いていますので、71年
くらいのことで、二十歳くらいでしょうか。ずいぶんとおくてであります。
最初の本は、青木保訳ですし、つぎは川田順造ですので、これは文化人類学に関係ある
人がかかわっていたものをおっかけていた結果でしょう。
 本日にすこしあさってみましたら、次のような中公新書がでてきました。
 246 マグレブ紀行    川田順造
 293 人生逃亡者の記録  きだみのる
 310 欧州紀行      埴谷雄高 
 336 ウィリアム・モリス 小野二郎
 344 草原の革命家たち  田中克彦
 646 私の二十世紀書店  長田弘

 どのような基準で、以上のようなものを手にしたのかとおもいますが、それなりに
思っていたことがあるのでしょう。中公新書といえば、「紀行」という表題のものが
何冊かありますが、これなどは、篠田一士さんのイギリス文学のジャンルに紀行文と
いうのがあるというのに、影響されて手にしたものと思われます。
 田中克彦さんは、この時からの付き合いで、先日の「ノモンハン」ですから、すでに
36年くらいの読者歴となります。そのわりによくわかっていないのですが。