ノマディズム 3

 今福龍太さんの「単独行者としてのフィールドワーカー」には、ノマディズムという
ことが、次のような話題ででてきます。
山口昌男さんは、イギリスの作家 ブルース・チャトウィンのノマディズムに非常に
惹かれていました。チャトウィンは、サザビーズというオークション会社の美術鑑定士
だったわけですが、あるとき突然、仕事を放り出してパタゴニアに飛び出していき、
それから世界放浪を始めました。中央アジア、ロシア、アフリカ、最後はオーストラリ
アに行き、アボリジニの世界を描いた『ソングラインズ』という素晴らしい本も著しま
した。」
 当方は、昨年に新書となって復刊した「ウッツ男爵」を読み、はじめてチャトウィン
のことを知ったのですが、山口昌男さんが、チャトウィンの惹かれていたということは
この今福さんの文章を眼にするまで知りませんでした。
 山口昌男さんが惹かれていたとなると、どこかでチャトウィンについて言及している
のかと思って、まずは「山口昌男ラビリンス」についている人名索引を開いてみます。
これは便利でありまして、たちどころにチャトウィンがでてくるページを発見です。

山口昌男ラビリンス

山口昌男ラビリンス

 この本にチャトウィンは三回登場するのですが、一度はさらっと名前だけ、もう一度
はすこしさわりで、惹かれていたというのがわかるのは、巻頭におかれた「アフリカを
探して 二十五年の対話の涯に」という山口さんと今福さんの対談のなかでありました。
この対談は、70ページに近い内容のものでありまして、未知の人がたくさん登場します
からチャトウィンのことが頭に残らなくとも不思議ではありません。
 この対談を読む限りにおいて、チャトウィンにより惹かれているのは、今福さんの
ようであります。