ノマディズム 2

 山口昌男さんのキーワードの一つに「ノマド」があります。
以前に山口さんの「独断的大学論」を紹介したときに、以下を引用しておりました。
「(大学を考え直すにあたって)私の場合のキーワードは『ノマド」ということに
なります。
ノマドとは、もともと遊牧民を意味するフランス語で、移動すること、したがって
ノマディズムとは移動主義ということになります。・・・
 私流の言い方をするなら、一つところに定住する農耕社会は、自分の村以外の者は
排除し、中にあってはヒエラルヒーをつくるタテ社会で、そうしたものから自由に
なるには、定住しをやめて放浪するしかない。昔の遊行僧やヤクザなどは、そうやっ
てヨコの組織を頼りに全国を放浪してまわっていたわけです。」
 これに続いてのくだりには、大学院の受験に失敗した未知の学生が山口の研究生に
してもらいたいときた話がありまして、それが今福龍太さんとあります。
 山口さんにいわせると「(今福もまた)ノマド的な生き方(クレオール主義)を
主張し、貫いています。」となります。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20090906 )

山口昌男 人類学的思考の沃野

山口昌男 人類学的思考の沃野

 この本は、四部構成で500ページからなります。
前書きのところで「本書について」は、次のようにあります。
「本書は、山口のかっての勤務先である東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化
研究所(AA研)が、突然の悲報に接して2013年6月7日に主催した『山口昌男追悼AA研
シンポジウム 人類学的思考の沃野』をひとつの機縁とする論集である。・・
第一部には、追悼シンポジウムでの発言を収録した。第二部には本書への寄稿を新規
に依頼した七名の研究者による山口昌男論を収録した。第三部には、山口が生前に
発表した作品のうち、現時点で入手困難な三篇を再録したほか、山口昌男のブック
ガイドとして、主要著作を対象とする既発表の書評文も再録した。第四部の資料編に
は、山口がAA研所員として過去に参加したアフリカ調査団の記録、および山口主宰に
よるAA研共同研究プロジェクトの活動記録とともに、山口昌男の生涯を追った年譜
著作目録を掲載した。
 本書には二つの特集ページが組まれている。第一の特集では、山口ふさ子夫人への
特別インタビューをはじめ、山口と親交が深かった国外の研究者二名による追悼文を
掲載した。第二の特集では山口昌男の足跡をヴィジュアルにたどる試みとして、故人
をめぐるご遺族所蔵の貴重な写真・スケッチ資料・およびフィールドにおけるスケッチ
の達人としての山口に焦点をあてた考察を収録した。」
 それで、ノマディズムですが、これはシンポジウムに参加した今福龍太さんの
「単独行者としてのフィールドワーカー」のなかにありました。