ノマディズム 4

 今福龍太さんによる山口昌男さんとブルース・チャトウィンであります。
 これは「山口昌男ラビリンス」の冒頭におかれた山口さんと今福さんの対談(これ
はたいへん知的刺激にあふれるもので、さながら山口版の「思想のドラマツルギー
の趣であります。)で言及され、そのなかにある今福さんの発言が、追悼シンポジウ
ムにおいても展開されています。
 それじゃ、山口さんはチャトウィンについてどのように語っているかであります。
「ブルース・チャトウィンを知って、めちゃくちゃにチャトウィンを読んだ。そういう
ときにチャトウィンというのはもともとホモチックな傾向があって、しかしながら物に
対する執着がものすごくて、それで絵画の売買のオークション会社サザビーズに入って
いったとね。サザビーズで物を扱うことや利ざやを稼ぐことを覚えて、その上で、
サンデー・タイムズ』の書評の担当記者になって、それでそれから流れ出してダホメ
の旧都ウィダへ行ったり、アフリカに行っちゃってね。それでそれを作品化する。
だから人類学者以上にそういう流動的な想像力を身につけて、それでオーストラリアに
行って・・・(今福さんの発言が、ここであり。アボリジニの神話世界と自分の
ノマド理論』を繋げようとした『ソングラインズ』ですね。)
 ああいうふうな作品になっていって、それで作っていきながらヨーロッパに戻って
来て、エイズで死んじゃうというね。ああいうふうな現代的な美しい叙事詩的な作家
ていうのは信じられないね。かえってだから人類学者が目指しているところも、
作家がすーっとね、行ってさっと消えてしまうという・・」
 山口さんの発言は、言葉足りずでありまして、相手が今福さんでありますので、
今福さんが適宜、言葉を足しながら、これを受け止めています。
山口さんがめちゃめちゃ読んだといっているのですが、チャトウィンの作品数は少なく
て、代表的な作品はほぼ日本語で読むことができるようです。