文士の時代かな 3

 林忠彦さんの「文士の時代」に登場する小説家さんは、名前は聞いたことがあるもの
の、どのような作品を残したのか、当方はわかっていない人が多くありです。まして、
顔写真をみても誰がだれやらであります。
 例えば「田村泰次郎」さんであります。小説作品の代表作には「肉体の門」というの
があります。何度か映画になっているのですが。当方はそれも見ておりません。この
作品で田村さんは一躍流行作家となったと、林さんは書いています。
「田村さんはその後、過労がたたったのか、脳溢血か脳血栓で倒れ、作家活動は中断し
ましたが、もともと次男坊で、裕福でもあり、本も売れたので、ビルをつくったり、
画商をやったりして、ずいぶん稼いだようです。丹羽文雄先生の跡を継ぐ作家とまわり
から嘱目されていたんですが、文壇で伸びるよりは画商として過ごしたんですね。絵を
見る目と経営才能が優れていたんじゃないでしょうか。」
 この田村泰次郎さんがやっていた「現代画廊」というのは、洲之内徹さんがやって
いたところとして有名ですね。
洲之内さんは小説家としてうまくいかず、「北支時代に知り合った田村泰次郎に拾われ
て『現代画廊』に入るのである。」とあります。洲之内さんが、その後有名となる
きっかけをつくったのは、田村さんであるといえます。

洲之内徹 絵のある一生 (とんぼの本)

洲之内徹 絵のある一生 (とんぼの本)

 洲之内さんについての本には、当然のこと「現代画廊」のことが取り上げられるので
すが、田村泰次郎オーナーに洲之内支配人でのスタートです。林忠彦さんは田村さんは
経営才能が優れていた記していますが、この「現代画廊」は経営不振となって、支配人
であった洲之内さんが、経営を引き継ぐことになったものです。