最近買った本など 6

 ということで「流浪の手記」にたどりつきました。文庫本で40ページほどの作品と
なります。ちくま文庫の「深沢七郎コレクション 転 」に収録されているのですが、
先日も記しましたが、この作品の初出などがあったら、もっといいのにであります。
 深沢さんが、1960年末に発表した小説「風流夢譚」が、引き起こした事件のために、
深沢さんは、1961年から63年くらいまで姿を隠すことになります。
「流浪の記」には、次のように書かれています。
「あの忌わしい事件 私の小説のために起こった殺人事件に私は自分の目を疑った。
何もかも私の書いた小説の被害ばかりなのである。諧謔小説を買いたつもりなのだが
殺人まで起こったのである。そうして私は隠れて暮すようになった。警察では再び
事件の起こらないようにと私の身辺まで警戒してくれた。それは何が悪いとかどちら
が悪いとかいう理由ではなく、不穏の事件が起こらないように、未然に防ぐためなの
である。」
 流浪とはいいますが、警察の警護つきであったようです。
「それから私は旅に出た。京都、大阪、尾道、広島、東北は裏日本を通って北海道へ
来た。目的も、期間もない旅なので汽車に乗ったり、バスに乗ったりした。靴はすぐ
足が痛くなるので下駄で歩いた。北海道はほとんどバスか徒歩だった。函館、札幌、
旭川稚内、釧路と歩きつづけた。私はなんのために歩き回ったのだろう?」
 北海道にはいったいどのくらいの期間滞在していたのでしょう。