深沢七郎さんの「言わなければよかった日記」(中公文庫)を手にして、それにある
尾辻克彦(赤瀬川原平)さんの解説を読みましたら、深沢さんの「流浪の手記」を読み
たくなりました。なんといっても「北海道を放浪」するのでありますからして。
そんなわけで、あわてて「流浪の手記」が収録されているちくま文庫を確保しました。
- 作者: 深沢七郎,戌井昭人
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 文庫
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最初(?)に単行本となったには、次の形であったようです。
- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1967
- メディア: ?
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- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1987/11/15
- メディア: 文庫
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て、姿を隠していた著者のものをだそうという腹の据わった版元というのは、そうそう
あるものではありません。これが徳間というのは、へんに納得でありました。
この徳間からでた「流浪の手記」はそれなりの値段になっているようです。
これで検索をしてみましたら、萩原魚雷さんの「文壇高円寺」にあたりました。
http://gyorai.blogspot.jp/2008_07_01_archive.html
ここには、「二十七日(日)、午前中から車で萬葉堂書店の鈎取店を案内してもらう。
深沢七郎の『流浪の手記』(徳間書店)があった。文庫(徳間文庫)は持っているの
だが、単行本は、見たことがなくて、ずっと探していたのである。
この本は「風流夢譚」事件後の放浪生活の話や「書かなければよかったのに日記」と
いう読まずにいられなくなるような題のエッセイが収録されている。」とあります。
これを読んではじめて、尾辻さんが解説で書いていることが理解できました。
「私はどうも思い違いをしていたらしいのである。深沢七郎の文章に触れて感動した
初体験は、この『言わねばよかったのに日記』である。私はそれを文庫本で読んだ。
ところが開いたところでは、これが文庫本になるのは今回がはじめてだという。
私はこの標題の本が、北海道放浪から帰ってきてその話を書いたエッセイ集だと
思っていた。私はそれを読んで感動したのである。
ところが今回パラパラと目を通してみると、どうも違う。北海道のことが出てこな
い。」
この解説を書いた尾辻さんがとぼけているのかどうかでありますが、尾辻さんが
文庫本で読んだというのは、魚雷さんの文章にありますように、どうやら徳間文庫
版であるようです。中公文庫の「言わねばよかったのに日記」は昭和33年にでた
単行本を文庫にしたもので、標題となった「言わねばよかったのに日記」は、
徳間文庫「流浪の手記」にも収録されているようです。
尾辻さんは、「言わねばよかったのに日記」と「流浪の手記」は合わせてよまれる
べきといいたかったのでありましょう。