夏の1冊 2

 夏の一冊で「あしながおじさん」をあげたのは、なによりもその挿絵が印象に残って
いるからであります。
 昨日には「麦わら帽子に虫取り網」姿の主人公と記しましたが、これはもちろん当方
の思い違いであります。昨日の岩波少年文庫版のカバーの絵を見ましたら、わかります
ようにこれはレーキであります。当方はこどものころから、これはレーキとよんでいま
したが、そういえば、これは農作業に使う道具でありまして、あまり都会に住む人には
なじみがないかもしれませんです。( くまでのようなものといえばわかりいいか。)
 岩波少年文庫のカバーに、この絵が使われているというのに、ほんとびっくりしたの
ですが、これに彩色がほどこされているのに、二度びっくりであります。
 どこかに、この岩波文庫があるはずと思いながら、すこし探してみましたら、次の本
がでてきました。(これがあるのは、すっかり忘れていました。)

 いまはどうか知りませんが、かっては図書館向けにハードカバーとした岩波文庫があり
ました。(たしか新潮文庫にもハードカバーがありました。)このハードカバーの文庫は
図書館向けでありますので、一般の書店での販売はなかったはずです。
すべての岩波文庫にハードカバーがあるのではなく、図書館協議会のようなところが
選定したものに限って特装文庫となり、セットで販売されたものです。
 この赤い表紙の岩波文庫は、これにありますように「岩波版ほるぷ図書館文庫」として
販売されたもののです。いまほど検索をしてみましたら、古本として販売されている
ようで、これは五百円ほどで入手可能なようです。
 ちょうど岩波文庫版の「あしながおじさん」がでてきましたので、その挿絵がある
ページをさっそく見てみました。岩波文庫160ページであります。

 8月10日と日付のはいった手紙に添えられた絵になりますが、この絵についてのくだり
は、次のようになります。
「あたし新しい帽子をかぶっていますの。これは例の郵便局で二十五セントで買いまし
た。この絵はあたしの最近のスケッチ 乾草(まぐさ)をかき集めに行くところですの。」
 この絵には、「まぐさをかき集めに行く」とあるのですから、手にしているのはレーキ
以外になく、どうしてこれを虫取り網と思ったのでしょう。
 この日の手紙には、「雨が降りつづいた一週間の間は、屋根部屋で夜ふかしして、盛ん
に乱読しました。おもにスティーヴンスンのものです。」とありまして、主人公が
スティーヴンスンの作品を読んでいたなんてことも忘れています。「宝島」ではなく、
「南島」もののようで、主人公は相当は読書かであります。