夏の1冊

 「本の雑誌」9月号が届きました。今月の特集は「本の雑誌が作る夏の100冊!」と
いうものです。「中高生の子を持つ親が子どもに読ませたい文庫」となります。
 当方は、とっくに子どもたちは大きくなって、中高生のころにどのようなものを
読んでいたのかもわかっておりません。子どもたちは、当方が家族の迷惑をかえり
みずに本をため込むことに批判的でありまして、結果として本好きな大人にはなり
ませんでした。家庭の幸せのためにはめでたしであります。
 中高生ということをのぞいたとしても、夏におすすめの本といえばどういうもの
がありますでしょう。せめて十冊くらい浮かんでこないかと思いながら、「本の雑
誌」のリストをながめていましたたが、うーむ当方が読んだことのある本がないこ
とだ。いまさらながら、当方が中高生になったつもりで、このリストにあるものを
詠むのもよろしであるかです。
 京都で学生をしていたころ、夏といえば祇園祭りが始まるまえに北海道に逃げ
帰り、そのまま二ヶ月ほど滞在していました。その頃は、本を読むくらいしか時間
つぶしの方法がないという田舎に、両親が住んでおりましたので、夏の読書といえ
ば、涼しい田舎でのものを思いだします。
 その時に手にしていた一冊といえば、次のものを思いだします。

あしながおじさん (岩波少年文庫)

あしながおじさん (岩波少年文庫)

 当方が手にしていたのは岩波文庫の一冊でありますが、印象に残っているという
のは、あの小説にはいっている挿絵の一枚でありまして、その絵というのは、この
岩波少年文庫版の表紙カバーにある「麦わら帽子に虫取り網」をもった主人公の後
ろ姿のものです。いまもそんなに苦労せずに取り出せるところにあるはずですが、
当方の岩波文庫版「あしながおじさん」には、この麦わら帽子姿の主人公の挿絵が
あるページに、この少女が印刷された岩波文庫しおりがはさまっているはずであり
ます。その昔の岩波文庫しおりには、どのようなものがあったでしょうね。
 それにしても、岩波少年文庫版「あしながおじさん」の表紙カバーは見事に当方
のつぼにぴたりであります。書簡体小説というのは、当方のこのみでありまして、
この「あしながおじさん」を読んでいたころと、上林暁さんの「中学一年生」を
雑誌の「展望」で読んだのは、同じ頃だったかな。