図書館から借りてきた岩波新書「西洋書物史への扉」を頭からではなく、うしろ
から読んでいます。時代の新しいほうから古いほうへとさかのぼっていくような
読み方でありまして、つまみ読みですね。
そうして読んでいますと、次のようなくだりに行き当たります。
「ペーパーバックは通勤電車や旅行中に読み捨てにされる宿命にあるということな
のかもしれない。しかしこれを真面目に蒐集しようという輩はいないかと言えば、
さにあらず、例えば英語圏の各地には古めかしい初版に狂奔するペンギン・ブック
ス・コレクターズ・クラブと呼ぶ組織がある。」
ペンギン・ブックスは1935年に創立され、創刊時に「武器よさらば」などが
低価格で発売されたとのことですから、日本では昭和10年のことになりますね。
ペーパーブックといえば、日本での代表的な存在は文庫本でありまして、「範を
かのレクラム文庫にとり」とある岩波文庫は、昭和2年7月の創刊ですから、こち
らのほうがペンギンよりもちょっと古いことになります。
ちなみに岩波文庫の最初のラインナップは23冊でありまして、これは過去に
セットで復刊されていました。まるで記憶に残っていませんが、いくらぐらい
での販売であったのでしょうね。
www.iwanami.co.jp 日本にももちろん熱心な文庫コレクターはいるはずでありまして、岩波文庫の
既刊分をすべて集めたなんて人のことは聞いたことがありますが、その人たちは
最終的にはすべて初版で蒐集するという方向に向かうのでありましょうかね。
ペンギン・コレクターが狂奔するとすれば、岩波文庫コレクターの行動も同じ
ようになるのでありましょう。
当方の手元には、古い岩波文庫がすこしあるのですが、すぐにでてくる若松
賤子譯「小公子」は初版が昭和2年10月ですが、当方の所有のものは昭和15年
のもので14刷とありました。年に一度は増刷していたのですから、売れていたの
ですね。