1914年夏 3

 1914年夏、第一次世界大戦が始まったということで、開戦から百年を話題にしよう
と思ったようでありますが、いつの間にかヨゼフ・ロート「ラデツキー行進曲」が
岩波文庫にはいったことに話題が移ってしまいました。
ラデツキー行進曲」といって思い起こすのは、オーストリアハンガリー二重帝国と
ハプスブルグ家、それに、この小説を翻訳した作家 柏原兵三さんのことであります。
 昨年に岩波文庫に入ったヨゼフ・ロート「聖なる酔っぱらいの伝説」は、購入以来
ずっと積んどく状況でありましたが、このブログの参考として手にすることになりま
した。(やっぱり本を手にするにはタイミングがあるものです。)

 この小説集に収録された「皇帝の胸像」という40ページほどの作品を手始めに読ん
だのですが、この岩波文庫の翻訳と解説を担当している「池内紀」さんによれば、この
ようになります。
「ロートの代表作とされる長編小説『ラデツキー行進曲』(1932年)は、軍勲ある
オーストリア名門一族の三代にわたる物語であって、オーストリア君主国の没落を長大
な挽歌にした。いかにもそこには旧君主国への夢がつづられており、おのずと作者は
古くさい政体を思慕する反動主義者とみなされた、。それに対してロート自身は、とり
たてて反論しなかった。反論するまでもないと考えたせいではあるまいか。時代遅れの
君主政体のとどめようのない没落を、詩情ゆたかにつづったまでのこと。ロートは併せ
て『ラデツキー行進曲』のミニ版のような短編『皇帝の胸像』(1935年)を書いて
いる。」
 ヨゼフ・ロートはユダヤ系の人でありますからして、「旧君主国への夢」など持ち
あわせるはずもなしでしょうね。