七月はバラ

 こちらはバラの季節です。七月に入って次々と花が開いています。
まずは庭にあるものです。

 黄色のバラで「ユリイカ」というのだそうです。この花の名前の由来をみましたら、
アルキメデスが発した「ユリイカ」にちなんでつけられたとありますが、本の世界で
いえば、ポーの「ユリイカ」とか雑誌にゆかりの名前であると思いたいことです。
 万年筆のモンブランが、過去の文豪とか作曲家にちなんだ限定の高級ペンを販売して
コレクター心理をくすぐったことがありますが、バラの世界にも文学にちなんだものが
多くあるようです。バラ苗のほうは、万年筆のように高額ではありませんが、地植え
するとすれば土地が必要ですし、鉢で育てるとなると手入れがたいへんであるようです。
「今は廃れてしまった草花や由緒深い芳香植物をあちこち捜し求めていた頃、一日、
小石川植物園に赴いて、私の意匠に入用な植物の名を書き留めた紙片を通りがかりの
園の人をつかまえて提示したことがあった。その園員は気安くその目録に目を通して
くれたが、やがて口にしたのは、『何かシェークスピア・ガーデンのようなことをおや
りですか』という言葉であった。
 実用派で、およそ趣味的なことには縁の遠い私は、自分の意匠が全然別個なもくろみ
に出ずるものであることを同氏に説明した。しかし、日本には万葉植物園のほかに、
私設的にしろシェークスピア・ガーデンなるものが幾つか存在していることをそのとき
初めて知って、私は驚きもし面白くも思った。」
 引用したのは、林達夫さんの「歴史の暮方」に収録の「ラヴェンダー」の一節であり
ます。書かれたのは1942年となります。(林達夫さんの文章を読む時には、いつ書かれ
たものかを注目ですが、これが70年前の文章とは)

歴史の暮方 (中公文庫)

歴史の暮方 (中公文庫)

 最近は、バラを育てている方が多くいますので、なかには文学に題材をとったバラで
コーナーをつくってる人もおられることでしょう。