七月はバラ 3

 花に雨は禁物であります。バラが次々と開花する、この時期にほしくないのが雨で
ありますが、一方において作物には雨が必要なのですから、勝手なものです。
降るのでありましたら、まだつぼみのうちに降ってほしいものです。
 とはいっても、バラの開花時期はひと月ほども続くのでありますからして、どこか
で花に雨となるのでしょう。
見事に大輪のバラが開花した時に雨に見舞われたら、泣きそうになってしまいますが、
どこかの方が花に傘をさしているのを見ましたが、その気持ちがよくわかります。

 バラには王家にちなんだものが多くありますが、これは「クイーンエリザベス」
であります。花は頭一つ抜けたようにすっと高くついています。
この時期は朝夕とカメラを手にして、花を撮影するのですが、オリンパスEP-1に、
かって愛用していたコンタックスG1につけていた45mmのプラナーをつけて、デジカメ
だけどアナログ気分です。ピントをあわせるのがちょっとたいへんですが、これも
すこしは慣れてきました。かちっとしてクリアすぎない写真がよろしいと感じてい
ます。

 ほんとうは小振りの花をたくさんつけるアスピリンローズです。この淡い色が
開花とともに色が変化するのが楽しみです。

ピエールドロンサールの白です。たくさん花をつけるのが特徴ですが今年はどうで
ありましょう。一番先に開花したものをクローズアップしてみました。
「私が園芸愛好者になったのは、はじめは家の付属として庭を作る必要からでした。
わが国の百姓家をイギリスの古い農家風に改築いたしましたので、それに映る庭、
しかし海岸地方の砂地という制限があるのでなるべくそれに適応したCountry Garden
をという考えから、手数のかからない、いわばeasy beauty本位ですべてきめていこう
と思ったのです。」
 林達夫さん「私の植物蒐集」からの引用です。(一部に省略ありです。)書かれた
のは1939(昭和14)年のことになります。戦時体制下というだけでなく、この時期に
本格的な英国風庭園を作ろうとした時の苦労話でもあります。
 上に引用したところに続いては、次のようにあります。
「多少材料を集めようと志しました。ところが全国のめぼしい種苗商五十幾軒から
カタログを取って見ても、西洋の雑木とありふれた草などはかえってなかなかに
ないのです。このときはじめて西洋園芸の移植は、その『流行』の面については
申し分ないが、『不易』の面、つまり伝統的な面、またいわばold-fashionedの方面
についてはあまり問題にされていないことを知りました。」
 ということで、林達夫さんは戦時中に英国風庭園を作るということに託して、
外国文化を日本に移植するにあたっての留意点を語るのでありました。