「吉野葛」というのは、谷崎潤一郎の小説のタイトルであります。
この奇妙な小説を初めて目にしたのは、平凡社よりでていたアンソロジー「伝統と現代」
に収録されていたからでした。
- 作者: W.B.イェイツ,篠田一士
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2000/09/01
- メディア: 単行本
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を確認することができずです。たしか、作品へのコメントがついていたはずです。
これを書き終えてから、リンクがはられているこの本に収録文章のところをまじまじと
みましたが、「吉野葛」は収録されていないことがわかりました。
そうなるとこれは「現代文学の発見 日本的なるものをめぐって」に収録されていたの
だろうということになるのですが、これについても確認が必要です。)
この小説のタイトルの「吉野葛」というのが、なにを意味するものであるのかわから
ないのであります。「葛」というのが、当方の日常生活のなかに存在していませんでし
た。当方の住む地方で「葛」といえば、でんぷん粉のことであります。でんぷん粉は、
当然のことじゃがいもでありまして、それがどうして「吉野」であるのかです。
子供の頃に熱を出して横になっていたりするとき口にするものといえば、缶詰のみかん
とでんぷん片栗粉でつくる葛きりまがいでありました。
谷崎潤一郎が、吉野名産の本葛についての蘊蓄を語っているのかと思えば、これは
大誤算でありまして、葛は国栖に通ずでありました。
「くずという地名は、吉野川沿岸付近に二箇所ある。下流の方のは『葛』の字を充て、
上流の方のは『國栖』の字を充てて、・・・
しかし葛も國栖も吉野の名物である葛粉の生産地という訳ではない。
葛は知らないが、國栖の方では、村人の多くが紙を作って生活している。それも
今時に珍しい原始的な方法で、吉野川の水に楮の繊維を晒しては、手すきの紙を製する
のである。」
当方が期待した「吉野の本葛」への蘊蓄をかたるのは、谷崎の狙いではありません
でした。