北の無人駅から 7

「北の無人駅から」で取り上げられている増毛町は、なんとか線路が残っているだけ
よろしいのかもしれません。国鉄の民営化の結果、あちこちの路線が廃止となったり
第三セクターによる運営となっています。まあ鉄道にそこまでこだわらなくてもいい
のかもしれませんが、代替となる路線バスでは、「あまちゃん」のようなドラマは
つくれそうにありません。
 増毛町は、むかしの豪商が残した歴史的な建物があって、それが映画の舞台として
使われていたというのが、「キネマが愛した『過去のまち』」というタイトルのいわ
れであります。
 映画作品は、「駅 STATION」であり、相米慎二監督の「魚影の群れ」、古くは
谷口千吉監督「ジャコ万と鉄」などのロケ地となっているのだそうです。
 かって回船問屋を営んでいた商店の建物は、いまは食堂となっているのだそうです
が、そこのお店に入ったときの印象が記されています。
「店に入ったときから気づいていたのだが、壁にはたくさんのサイン色紙が所せまし
と貼られている。一枚一枚を見ていくと、字のデフォルメがきつすぎて誰のサインだ
かわからないものも多いが、中にはわかりやすいものもあった。
『これは田中邦衛さんのサインですよね』
奥さんにむかって遠慮がちに声をかけると、調理場から覗き込むかたちで、
『そうですそうです』といった。『で、その隣が寺田農さん、その隣が烏丸せつこ
さん、そして宇崎竜童さん、かな』
 なるほど、そういわれれば、確かにそのように読める。いずれも『駅 STATION』の
出演陣である。渋いところでは、今福将雄などというのもあり、まさにサインもいぶし
銀だった。」
 このあとに、主演の高倉健さんや、倍賞千恵子さん緒方拳さんのサインを見るくだり
があるのですが、当方は、その前にあった「今福将雄」さんという渋い役者さんの名前
を見いだしてにんまりとしてしまいました。
 今福さんは、今から50年以上も昔、当方が住んでいた開拓地でロケがあった渥美清
ん主演のドラマの出演者でした。分教場の教員というのが今福さんが演じた役ですが、
この生徒役には、当方と同じ小学校のこどもたちがエキストラで出演していました。
今福さんは役のための衣装を現地調達されたのですが、当時40代であった亡父の
カーディガンがいいだろうということで、これを着用して撮影となりました。
 当方の亡父とはほぼ同年でありまして、わが家族にとって今福将雄さんは、特別な
役者さんであります。