遠方より届く 4

 当方が大学にはいった頃には、いまだ学園闘争のなごりがありまして、大学の構内で
ヘルメット姿の学生をみかけましたし、ある日「途方ない夢を見て」、学校で姿をみか
けなくなるクラスメートもいましたです。姿を見かけなくなった人たちは、その後、
どうしたのでありましょう。当方は、大学時代の同級生たちとは、ほとんどつきあいが
なくなってしまっていますが、姿を見かけなくなった人の一人は、軍事政権下の韓国に
わたって、その地でスパイ容疑で検挙されて、同級生たちは、彼の救援活動を続けて
いました。
 当方が在籍した学科は、就職にはまったくつぶしのきかないものでありましたので、
もともといいところに就職をしようとして、この学科に進学してきた人は、ほとんど
なしでした。現実に、アルバイト先にそのまま就職したとか、塾の講師になったりとか
いうのが普通でありました。
 事情通の知人にいわせると、こうした学科から途方ない夢をみて、飛び出した人た
ちがありつく仕事というと、業界紙の記者、総会屋などがありとのことでした。
 これがどのくらいあたっているのかわかりませんですが、内堀さんにいわせると、
かっては古本屋店員というのもありとなるのでしょうか。
 内堀さんの「古本屋の時間」を開いてみますと、「途方ない夢」を見た後に、古本
業界にはいって来たと思われる人の肖像が描かれています。
 古本屋大塚書店主については、この内堀さんの文章ではじめて知りましたが、60年代
新左翼が指導する労働運動があったことは、当時の「朝日ジャーナル」で承知して
いました。その運動に関わった人で、古本屋主人になった人が、その後をどう生きた
か、いろいろな感慨をおぼえることであります。