本日の話題 3

 今回の参議院選挙で一番争点になるべきであったのは、やはり憲法改正であったの
でしょう。それも手順についてのところを議論するのではなく、これまで一番話題に
なっていたことをであります。もともとそれまでの政権与党のなかにも改憲を主張す
るグループがいたのでありますからして、改憲を軸にして政界は再編されるというの
も、遠い未来ではないのかもしれません。
 昨日に話題としていた新聞は1996(平成8)年8月のものでありましたが、それと
一緒に1996年10月31日の新聞がありました。ちょうどその年に政界を引退した後藤田
正晴さんにインタビューした連載企画の4回目が掲載されていました。
「『護憲』ねえ。ちょっと違うんですよ、ぼくのは。ぼくが前からいっているのは、
こういうことです。日本憲法成文憲法、硬憲法だから、解釈は柔軟にしないと憲法
が世の変化に対応しなくなる。憲法が邪魔になってくるということが起きるよ、と。
しかし、成文である以上限界がある。むちゃな解釈はできない。ならば世の中の変化
に合わせて必要最小限の改正はせざるを得ない。すぐにというわけではないがね。」
 最近の国会議員とくらべると人物がまるで違うように思いますが、96年にこのよう
にいっていますので、後藤田さんもそういっているではないかと、これを改憲のため
の援用するひともいるでしょう。すぐにではないということだが、それはいつである
のかで、最近、よく耳にすることばでいきますと、いまでしょとなるのかな。
 上に引用したのに、続いて後藤田さんの発言であります。
「改正しなければならない点はあるんだけど、では改正しないとこの国がおかしく
なるかというと、ならないんだ、当分は。
 逆におかしくなる恐れがあるのは、いまの憲法改正論が九条改正論だということだ。
ぼくは九条は直す必要がないと考えるが、直せという意見がありますね。しかしいま
直さないといかん国際情勢にあるか。これだけ激変しているさなかに改正してプラス
になるのか。また国論を二分することになるのではないかと思う。今とるべき政治の
判断としてはおかしい、と。・・
 だから少なくとも、双方の国で第二次世界大戦の生き残りが死ぬまではやるな、
やるとしてもそれからでいい。国際情勢とくにアジア各国の反応をよくみたうえで、
というのがぼくの考え方なんだ。来世紀の十年前後、そこらが目安かな。今はその
判断の時期ではない。今は現状でよろしいということだ。いずれにせよ九条改正は
やらん方がいい。」
 戦後の枠組みというのは、このような考え方の人がブレーキをかけることで、
脱線しないようにしてきたわけであります。もちろん戦争体験があってのことであり
ます。
 後藤田さんは、同時代の総理大臣経験者に九条改正を持論とする人がいたせいか、
ことのほか、このことに神経をつかってきたのでありましょう。最近の政権には、
このようなブレーキをかける人がいないようでありまして、そのことも含めて、
見事に内向きで仲間内だけでやっているようにおもえることです。