山の子供

 子どものころに、町の親戚のところへと遊びにいきましたら、そこのおばさんに
山の子供がきたといわれたものです。当方のこども時代でありますので、いまから
半世紀も前の話であります。
 いまも山の子供なんていわれ方がされているのでしょうか。
 ちょうど当方が「山の子供」と呼ばれていたころの小説に「山の子供」という
作品がありまして、そのおばさんがその作品を読んでいたとは思えないのでありま
すが、小説「山の子供」の作者は、北海道にゆかりの方です。
 いまではほとんど読まれることもなくなっていると思いますが、作者「畔柳二美
さんは、「姉妹」という作品で有名でありまして、その昔は人気作家でありました。
 小沢信男さんの「通り過ぎた人々」にも一章をさかれています。
小沢さんの「通り過ぎた人々」の畔柳さんのところから、すこし引用です。
畔柳二美は、新日本文学会で私が最初に親しくしていただいた先輩だ。・・
出会った時は、代表作の『姉妹』を『近代文学』に好評連載中で、みるみる人気作家
になる最中だった。北海道の発電所に育つ姉妹の成長を短編連作風に綴って、姉が
弱気、妹が勝ち気。この妹が作者自身にちがいなかった。連載をまとめて。1954年6月
講談社より刊行され、毎日出版文学賞を受けた。すぐに映画化がきまった。」
 この映画は、昨年かにBSで放送されていたように思います。小説の「姉妹」を
読むよりも映画「姉妹」のほうを眼にするほうが容易であるのかもしれません。

 友人からこの映画のDVDを借りてすこし見たのですが、当方が子供のころに訪れ
た札幌の街が作品の舞台となっていました。その街にいくと当方は山の子供と呼ばれ
るのでありました。