遠方より届く 2

 「古本の時間」をななめ読みをしていますが、昨日は内堀弘さんが山口昌男さんに
ついて言及しているところを見ておりました。たしか、こんなところがあったはずと
思いながら、そのくだりをさがしていたのですが、これが見つからずでした。
 斜め読みをして印象に残るところがあったら、備忘のために付せんをはっておか
なくてはいけないようです。
本日に再チェックしていましたら、この本の最後のところにあるではないですか。
「いつだったか、山口さんと待ち合わせをするのに、その時間にある出版社で社長と
会っているから、社長室に来いと言われた。勘弁してくださいと、私はその受付で待っ
た。やがて山口さんが見送りの社長と一緒に降りてきた。山口さんは親子ほど若い私の
ことを『友達です』と紹介した。私は戸惑いながらおじぎをした。」
 山口昌男さんは、内堀さん、田村治芳さん、高橋徹さんという古本屋店主と坪内祐三
さんからなる東京外骨語大学という小さな集まりを行っていたのでありますが、これの
はじまりは、今から二十年ほど前のことで、その頃は「今は多忙な坪内助教授も、雑誌
編集者を辞めて本屋と図書館巡りに忙しい無職の暇人であったし、山口学長も本家東京
外国語大学の定年を迎え、こういってはなんだか、昼間から神保町をブラブラしていた。
私たち古本屋三人も、たいした稼ぎもないのに時間だけは妙に持て余していて、何かと
いっては集まった。」そうであります。
 ちょうど山口さんの「『敗者』の精神史」を書いていた時代にかぶるのであります。
山口昌男さんのキーワードの一つは「敗者」でありますが、ご本人が敗者であるかどう
かはてさてであります。それとくらべますと、古本屋店主三人組は、世間的な価値基準
からいいますと、いわゆる勝ち組ではありませんですね。
 山口昌男さんから「出版社の社長室に来い」といわれて、「勘弁して」と内堀さんは、
答えるのですが、ここのところに古本屋店主の立ち位置があるように感じることであり
ます。(山口さんが親しい出版社社長といえば、これは岩波のようにもおもえますが、
これはどうでしょう。)
 こうした状況で、坪内祐三さんに同じような話があったときに、坪内さんは、どの
ように反応したでしょうか。