本をたどって 3

「えびな書店 店主の記」に収録の文章の半数ほどは、書店で発行している「古書目録」
「書架」の編集後記として発表されたものです。頼まれたものではなく、顧客にむけて
の文章であるせいか、へんに力がはいっていなくて、読みやすしです。
 書店主 蝦名則さんは、生年をみますと当方と同学年となります。1982年7月に編集
者をやめて古本屋に転じたとありますので、ずいぶんと思いきったものです。
「意にそまぬ雑誌を作るなら自分で稼ごうと決心したわけです。半年はフリーの編集者と
の兼業で、それから本業になりました。
 不安がったのは妻で、幼稚園児がいましたから当然だったでしょう。知り合いから譲り
受けた三・七五坪の店に隙間なく本を並べました。ガラス戸は取り払って道路に面して
文庫の棚、内側はマンガの棚になりました。ビニール本三列、男性雑誌が三列あって、
これはレコードを見るように一冊ずつ引き上げて見ていくように箱を造りました。
初版本がありました。外国文学もありました。美術書やカタログ、さらにはみすずや岩波
の本もあるという、総合小型古書店、典型的な街の古本屋がしばらくしてできあがりま
した。」
 こうしてスタートした古書店が、いまはどのようになっているかは、えびな書店のペー
ジをみていただくのが一番でありましょう。
http://www.ebinashoten.jp/
 美術専門の古書店とありますので、当方のふところ具合では、ちょっと近づきにくい
感じもありですが、「ビニール本、男性雑誌」などを並べざるを得なかった開店時から、
30年、よくもいまのような書店となったものです。