新しい歌舞伎座が開場したせいもあって、歌舞伎にかんする情報が多くなって
います。当分の間、歌舞伎座は満席状態が続くのでありましょうが、すこし時間が
たってから足を運んでみたいものです。
「昭和七年という時代である。歌舞伎を上演する劇場が、東京に四つもあり、役者の
数も、いまの三倍以上だった。
浅草や本所にもまだ小芝居もあったから、大歌舞伎との格差もあり、大劇場の中にも
ランクがあった。そして、それぞれの劇場におもに出ている一座の中に、おなじ役柄の
人がいく人もいて、芸を競い、人気を争っていた。」
こういう書き出しとなっていますのは、戸板康二さんの小説「木戸御免」であります。
戸板康二さんが「團十郎切腹事件」という作品で、直木賞を受賞しているということを
知りませんでした。
今から6年ほど前に創元推理文庫で「中村雅楽探偵全集」全五巻が世に出たことによ
り、小説家 戸板康二さんを知ることができるようになりました。
主人公 中村雅楽さんは、渋い歌舞伎役者さんで、歌舞伎界のご意見番のような存在で
あります。老優で探偵役というのは、エラリー・クイーンの作中人物に借りたとのこと
ですが、ワトソン役の新聞記者さんとの間で、歌舞伎談義がかわされ、これは勉強に
なることです。
- 作者: 戸板康二
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