みすず読書アンケート 3

日高六郎 95歳のポルトレ」をあげている最後のお一人は、文芸批評の加藤典洋さん
でありますが、この方のコメントは、次のものです。
「近年読んで珍しく背中の広い人間がここにいることを実感できる快著。背筋が伸び
る。」「背中の広い人間」というほめ言葉があったか。

日高六郎・95歳のポルトレ―対話をとおして

日高六郎・95歳のポルトレ―対話をとおして

 このように見てきているのですが、いまだにこの本を読むにはいたっていません。
これを記すにあたり、おくればせですが、本を手にして中をのぞいています。
 それにしても、いかにもSUREからでてきそうな本でありますが、これは新宿書房から
のものです。本の雰囲気は、その昔の晶文社からのもののようです。装幀は平野甲賀
さんでして、編集は中川六平さんとあっても不思議ではありません。
 これがどうして新宿書房からでたのかについては、この本の冒頭に、次のようにあり
ました。
1984年、私(黒川創)は大学を卒業し、東京で働きはじめた。ほぼそれと同時に、
同じく日高先生を介して知り合えた新宿書房の村山恒夫さんから、『日高六郎さんの
自叙伝を聞きがきでまとめないか』と、声がかかったのだった。」
 これを受けて、黒川さんは日高さんのインタビューを始めるのですが、ほとんど本と
なる寸前までいって、日高さんのOKがでずに日の目をみなかったとのことです。
それから二十年ほどたって、ふたたび日高さんの聞き書きの機会をえることになり、
それでやっと黒川さんは、新宿書房 村山さんとの約束を果たすことになりました。
 これが完成できていなかったことについて、「いったん受けた仕事をこういう形で
著者から投げ出されるのは、出版社の側にはかなりの打撃でもあったはずだ。」とあり
ます。
 この本には30年もの思いがこめられていることになります。