最近手にした本 8

 いしいひさいちさんのバイトくんの舞台となる「仲野荘」が現存しているというのは、
ちょっと驚きであります。
 当方が学生の頃に住んでいた建物は、元まかないつき下宿で、食事がなくなって
単なる部屋貸しとなったものですから、仲野荘とは建物のつくりがちょっとちがう
ようでありますが、それでも玄関をあがったら一階、二階は真ん中に廊下があって、
それに面して四畳半の部屋がならんでいるというのは、共通していました。つきあたり
に洗面所と共同トイレがありました。男女まじって暮らしていましたが、すくなくとも
男性入居者で、部屋にかぎをつけていた人などはいなかったように思います。
(入り口のドアにフックをつけて、それに南京錠をぶらさげるというのが一般的で
した。)
 当方にしてからが、隣の入居者のところに実家から柿がたくさん送られてきたと
きくと、留守のときに勝手にはいって、段ボール箱に入っている柿を持ちだして、
自分の部屋で食したものです。
外出から戻ったら、友人が部屋で本を読んでいたなんてこともありましたね。
 今から十数年前に、学生時代に住んでいた場所を訪れましたが、そこにあった下宿
は解体され、駐車場となっていました。
 70年代のはじめ頃には、学生寮などを除くと一部屋に二人で住むというのはなく
なっていたように思います。(そういえば、予備校では学生寮に住んでいたのですが、
この時は、二人一部屋でありました。)
 それがワンルームのようになったのは、何時頃からでしょうか。一畳千円くらいが
相場の部屋代は、ワンルームになったことで、一気に家賃が十倍ほどになったのであ
りました。つくづく昔は住宅事情がよろしくなかったことです。