「ちくま」6月号から

 昨日に続いて「ちくま」6月号から話題をいただきです。

 今月からちくま文庫で「現代マンガ選集」というのが刊行されるのに

あわせて、中条省平さんと夏目房之介さんのお二人による記念対談が

掲載されています。

 そのタイトルは「『マンガ』の広さと深さを再発見せよ!」という

ものです。

 当方は再発見というよりも、ほとんどわかっていないのでありますか

らして、この対談を興味深く見ることになります。

現代の日本で一番影響力の強い表現形式の一つである「マンガ」につい

て、当方は乗り遅れたままでありまして、いまだに乗れていないのであ

りますね。

 とはいうものの、カタカナで表記される「マンガ」とは、まさに当方

の同時代に起こったものでありまして、そうしたことからいえば、当方の

すぐ近くで進行していた表現であったのです。

 中条さんはこの対談の皮切りに、次のように語っています。

「1968年から72年に発表されたマンガを並べてみたら、途方もない

エネルギーの塊のように見えた。ページを開いたときに、マグマみたいな

ものが吹き出ているような印象をもったんですね。これはやっぱりただごと

ではないし、あの時代の日本マンガのパワーはすごい、ある種の時代の力を

感じたのです。」

 68年から72年というのは、当方が高校を終えてから大学に在学してい

る時代であります。学生運動がピークをむかえて、あさま山荘事件に向かっ

ていく頃にあたります。

 この時代に、当方としては珍しくコミック誌「COM」を買っていたこと

があるのです。どうして買うにいたったのか、手塚の「火の鳥」を読もうと

思ってだったのかな、これがよくわかりません。

たしか「トキワ荘シリーズ」とかは読んだ記憶があるのですが。実験的な

作品で印象に残っているものは、まるでなしで、このへんがマンガに対する

当方の感覚の鈍さを示しています。

 どのくらいの冊数を持っていたのかですが、学生下宿を引き払うときに、

当方が持っていた「COM」は同じ下宿の後輩にあげてしまったはずです。

今となっては、惜しまれることですが。

 続いて中条さんから、マンガ表現を切り開いた人として、石ノ森章太郎

続いてあげている岡田史子さんのくだりを引用です。

岡田史子は、いきなり『COM』に、一切のそれこそ『マンガの制度』み

たいなものと断絶した数ページの作品を送りつけて、掲載された。

岡田は『花の24年組』よりもはるかに早く、要するに、制度を取っ払うこ

とだけをやってくれた。そのおかげで、『COM』の読者だった後の『花の

24年組』が、岡田史子のやり方に勇気を与えられた、そういう感じがし

ます。」 

 北海道の田舎の高校生であった岡田史子が、同世代の表現を志す人たちに

非常に大きなインパクトを与えたということを、当方はまるで知らずであり

ました。

 それについては、当方よりもすこし若い四方田犬彦さんの文章で知ること

になったのですが、それについては、以前も記したことがありました。

vzf12576.hatenablog.com 中条さんが編集する「現代マンガ選集」には、当然のこと岡田史子さん

の作品が収録されるのでしょうが、すでにちくま文庫から刊行されている

「COM傑作選 上」で読むことができます。

COM傑作選 上 1967~1969 (ちくま文庫)

COM傑作選 上 1967~1969 (ちくま文庫)

  • 作者:中条 省平
  • 発売日: 2015/04/08
  • メディア: 文庫