角館という町 6

 角館の人 平福百穂画伯について話題としています。日本画家として、アララギ派
歌人として、それに秋田蘭画の紹介者としての一面をももっているのですが、今回は
岩波文庫にはいりました「日本洋画の曙光」の今橋理子さんによる解説に案内されてい
ます。
 画家としては作品を発表するほか、「婦人之友」とか「アララギ」の表紙に絵を寄せ
ていたり、アララギ同人の歌集などの装画を担当していました。
 「アララギ 平福百穂追悼号」昭和9年刊は、いつもの号よりもずっと厚いのですが、
全巻がほぼ平福画伯の追悼にあてられています。巻末には広告のページがあって、岩波
書店による平福画伯著作の広告欄もあるのでした。
 今橋理子さんの解説文からです。
「赤い紙面に印刷された広告のページが挟みこまれており、岩波書店による『日本洋画
の曙光』の宣伝文が掲載されている。これにより、・・・昭和五年の発行以来、昭和九年
四月の段階で残部が五八部であることなどが判明する。そして当時の美術界また美術史界
に向けて、いかなる位置づけを期待してこの書が発行されたかが窺われる宣伝文が記載さ
れている点でも、興味深い資料でもある。よって全文を掲げておきたいと思う。」
 ということで、この赤い広告の文章は、解説に全文が引用されています。全文は岩波文
庫でご確認くださいですが、これの広告ページは、以下にはりつけてみることにします。

 この広告によりますと元版は、定価三十円とあります。
 菊四倍版本文九八頁 上製帙入 三色版十葉 瑠璃版二十葉 本文組込編目版六十箇
 この時代における三十円というのが、どのくらいのものであるのかわかりませんが、
この広告の裏頁には、平福画伯の歌集「寒竹」の広告がありますが、こちらは二円二十銭
とありますので、その十倍以上ですから、相当に高価なものであります。
 ちなみに「寒竹」の推薦文は、斎藤茂吉によるものですが、それを引用してみましょう。
「 平福百穂画伯はみずから歌壇の素人を持って処らる。然れども伊藤左千夫長塚節
と吟詠をともにせられしおりすでに二十有余年の久しきを経、その歌調清淡にして切実、
直裁にして深遂はじめより一家の風格をなせり。いまや漸く友人等相計り画伯の詠み棄て
たる、明治三十八年より昭和二年に至るまでの作中より六百五十余首を精選し、アララギ
叢書の一編となす。巻中の若干首、古歌聖の作と伍して敢て遜色なしと信ずるものを持っ
て世に問わむとす。願わくは清鑑をたまえ。