明日返却予定

 図書館から借りた本は、借り出し期間が二週間となりますので、明日返却をしなく
てはいけません。なんとか目を通すもの、借り出し期間の延長手続きをするものと仕
分けとなります。
 明日返却のものを大慌てでページをめくっておりました。

昭和の翻訳出版事件簿

昭和の翻訳出版事件簿

 この時代でありましたら、外国で出版された本の翻訳でトラブルになりそうになり
ましたら、諸外国の著作権法に通じている弁護士に相談ということになりそうですが、
この本の著者 宮田昇さんが仕事を始めた頃には、いまだそのような専門弁護士は存
在せずで、各国の事情にくわしい宮田さんなどが、相談にのっていたようであります。
 この本を読んで、翻訳権十年留保とか、ベルヌ条約というものを知ることになりで
す。「翻訳権十年留保」とは、宮田さんの文章では「簡単にいうと」、次のようなこ
とだそうです。
「原書が発行されてから十年以内に翻訳出版されなければ翻訳権は消滅して自由に出
せる。しかし、著作者の許可を得て十年以内に翻訳出版をすれば、翻訳権は消滅しな
い。当時の著作権の保護期間は著者の死後三十年間だから、その間は著作者の許可を
得なければ翻訳出版できないと定めている。」
 この規定はベルヌ条約にあるもので、明治時代に定められ、その後昭和3年に改正と
なって国際的に認められていたものとのことです。(1970年に規定が変わったとのこ
とが書かれています。)
 かってのこの規定の解釈などの違いにより起こった競訳事件としてジェームズ・
ジョイスユリシーズ」の第一書房版と岩波文庫版をめぐる争いが紹介されていまし
す。
 この両社におけるやりとりは、結局は第一書房に非があって、第一書房が著作者に
ペナルティを支払っているとあるのですが、これについて、一冊の本が書かれていた
とは、まるで知りませんでした。
昭和初年の『ユリシーズ』

昭和初年の『ユリシーズ』

 この翻訳に関しての岩波の方針が紹介されていました。
岩波書店が翻訳権のあるものは、絶対に出さなかったのは、当時のヨーロッパの文
学作品の初出翻訳を岩波文庫で見ていくとよくわかる。すべて十年間経過している。」
こう書いたあと、トーマス・マンアンドレ・ジッド、ヘルマン・ヘッセの良く読ま
れた作品の初出刊行年と岩波文庫となった年が掲げてありました。
 最近の岩波文庫と違って、その昔は、とにかく古典となった作品が収録されていた
のですが、著作権は残っているものはだしても、翻訳権を取得して文庫化なんてこと
はなかったようです。
 そういえば、このところ、岩波文庫江戸川乱歩作品がはいっていますが、こちら
は没後50年となり、著作権が消滅したことによりますね。
TPP交渉でも、著作権の問題などが話題になりましたが、金がからむとややこしい
ことになりです。