阪田寛夫全詩集を編む

 日本で個人全集というのは、作者が生前に刊行となるものは、作者に都合の悪い
ものは収録されないのが一般的で、なによりも生前に全集というのは、どういうこと
でありましょう。作者が亡くなってからの全集であっても、発表済みの作品であって
も、すべては収録されていなくて、ましてや未発表のものまで収録のものは、めった
にないといえるでしょう。
 これは職業作家の場合には、生活を成り立たせるために、たくさんの作品を書かざる
を得なくて、発表したすべてを収録すると、とんでもない巻数を必要とするからであり
ますね。毎月のように新刊の単行本を発表する作家などもいるのですが、その方に
ついて作品集を作ろうとすると、それだけでも大変なことになります。
「昨年、突如、というかんじでぼくのネットミュージアムが登場した。パソコンをやら
ないぼくにはほとんど何もわからない世界で、事務所のスタッフや関連する仲間たちが
みんなして作ってくれたもの・・・
 なかなか興味深いものがいくつもあって、その最大のものは、これまでじぶんの
書いてきた本の数が初めてわかったことだ。」
 とこのように書いているのは、椎名誠さんであります。(「本の雑誌」2012年1月号)
「オリジナルの元本は今二百二十八冊」とあるのですが、椎名さんの刊行本は、多いと
いうのでしょうか、それとも、まだまだというのかです。
 こうした人気作家とくらべると、地味な作家のほうが作業はやりやすそうであります
が、それはそれで未発表のものとか、初期のものの収集などにも、作業がむいていき
ますので、奥が深いものとなります。
 それじゃ阪田寛夫さんの本というのは、どのくらいあるのでしょう。伊藤英治さんが
リスト化したものは、まずは講談社文芸文庫の「うるわしきあさも」の巻末に掲載され
ています。
 単行本1 小説      19冊
 単行本2 詩集      16冊 ( うち5冊は まど・みちおさんと共著)
 単行本3 児童文学    19冊  
 単行本4 評論・エッセイ 9冊 
 単行本(文庫は除く)は、これだけですので、63冊ですね。刊行詩集は16冊です
から、これを軸にして、そのまわりに未発表のものを集めて、1000ページからなる
阪田寛夫全詩集ができてくるわけです。