阪田寛夫全詩集を編む 2

 まど・みちおさんは、いまだ健在でありますが、すでに全詩集が刊行されています。
それからも作品を発表していますので、これは全詩集補遺としてまとめられるので
ありましょう。それであれば、伊藤英治さんがいなくてもできるでしょうが、問題は
理論社が、かっての理論社ではないことでありますね。
 シャイな人 阪田寛夫さんが健在であれば、はたしてこのような全詩集となったで
しょうか。それについては、阪田寛夫さんの著作権継承者となった長女の内藤啓子
さんが、この全詩集によせたことばに、次のようにあります。
「 伊藤英治さんは、父の生前より十六年の歳月をかけ、全詩集に取り組んでください
ました。父の死後、伊藤さんに無人の家の鍵を渡しました。埃だらけで地層のように
重なった資料を、一つ一つ丹念に調べ、たくさんの詩を発掘、光をあてていただきま
した。『僕はこの全詩集に編集者生命をかけています。』と口癖のように仰っていま
したが、病に倒れられ、残念ながら本書の刊行を見ることはかないませんでした。
 文字通り生命を削り全詩集を編んでくださった伊藤英治さんに、深い感謝を捧げ
ます。」
 それにしても、阪田さんのご家族も、理論社もなんとかして編集者伊藤さんが亡く
なる前に、これの刊行をしようと考えたはずであります。伊藤さんのあとがきの日付
は2010年7月13日とありますので、順調に進行しましたら、亡くなった12月3日前には
刊行も可能でありましたでしょう。
 伊藤英治さんのあとがきは、まさに編集者にしかできないあとがきでありまして、
この全詩集であっても、除外されている作品があることが明記されています。