小沢信男著作 164

 高田行庸さんの写真に、小沢信男さんの文章を添えた「東京下町親子二代」でずい
ぶん楽しみました。なによりも写真家 高田さんの叔父さんにあたる高田浪吉さん
のことから島木赤彦全集に手が伸びたのが、思わぬ収穫でありました。
 小沢さんは、この本で学校を終えるとすぐに奉公にでた明治から大正にかけての
男性たちに自分の父親を重ねあわせていたのでありましょう。 
 当方は「アララギ」によって歌作にはげんだ大正から昭和初期に青春をむかえた
男性たちに、小生の父親の姿を見ることができました。父のことを知る人からは、
父との「アララギ」関連の話の時に、高田浪吉さんの作品に話題が及んだことがあり
と連絡をいただきました。
 この「東京下町親子二代」の次に紹介するのは、「あの人と歩く東京」(筑摩書房
1993年5月20日刊)となりますが、次の本へは「本所つながり」で流れていくことに
いたしましょう。
「この作品は、本所に下宿する大学生が東京の街々を歩きまわる話です。麻布の飯倉
から神田上野日暮里そして本所へ、電車賃がないもので東京中をトの字形に踏破した
り。」
 この作品とは、中野重治さん「街あるき」であります。これも楽しみだな。