小沢信男著作 146

 高田さんの写真集は、高田さんの写真館(自宅)から半径300メートルほどに住む
家族を取り上げたものです。
本所が、どのような成り立ちの町であるかについては、小沢信男さんの文章を読んで
くださいとあります。小沢さんは、どのように書いているのでしょうか。
 まずは、本所が見渡せる場所へといくことになります。
「そこでまず新築の墨田区役所へ、吾妻橋を渡ってゆく」とあります。
そこは、二十二階建てのアサヒビール本社、三十階建ての公社マンション、十九階建ての
区役所がならびたっています。区役所の南窓から見下ろす町々が、本所です。

「 東京大空襲で、本所区は九十五%が焼失した。焼け残ったのは隅田公園からビール
会社へかけてと、両国駅から同愛病院までの横網界隈、錦糸町駅周辺、ぐらいのもの
だったという。この徹底罹災度は、東京三十五区のなかの最高だった。
 南窓の真下に、瓦屋根がつらなる小粋な三角地帯があるが、これがわずかな焼け残り
だ。戦前の町並みの貴重ないわば残闕である。」