小沢信男著作 14

 小沢信男さんは作家であります。作家=小説家ではないぞというのが、小沢さんの
活動からまなんだことです。
 もともと小沢さんが文学活動を始めたのは詩作からでありました。
「サンパン」に連載していた「小沢信男一代記」には、この人についていこうという
ことで、最初の文学の師「丸山薫」さんとのことが語られています。
 小沢さんが丸山さんの詩に感動して「文芸年鑑」かなにかで詩人の住所をしらべて
ファンレターをおくり、それにはしばらくたってから返事があったのだそうです。
返事をいただいたことに感激して、そのあと丸山薫さんに自作の詩を送っては、評価
してもらっていたとあります。
 このときにやりとりした丸山さんからの書簡は、丸山薫全集に13通掲載されている
といいます。これらの手紙を受け取っての小沢さんの感想です。
「ぼくは長いこと病気して、人生から降りている気でいたけれど、それが弱点だ、
まともにぶつかれと再三いわれて、ありがたかった。当時、丸山さんは五十歳前後で、
ぼくは二十代の前半でした。丸山さんこそわが青春の恩師だね。読み返して、いまだに
ドキンとくるね。いわば人生の予備校で丸山さんにソフトにしごかれていたんですね。
 丸山さんと文通しているうちに、豊橋のグループで詩の雑誌をだしたから、君も
入りなさいといわれた。『角笛』という誌名で、昭和24年12月に創刊した。」
 これは新日本文学会にかかわる前のことあります。