メディア・アート創世記 14

坂根厳夫さんの「遊びの博物誌」で、当方の頭にすり込まれた名前に、エッシャー

ならんでイタリアのデザイナー ブルーノ・ムナーリがありました。数年前に日本で
回顧展が開催されて、その時に芸術新潮で特集を組んでいたのが記憶に残っています。
あれも朝日新聞が関わっていたのでしょうか、朝日新聞の広告に図録を販売するものが
ありまして、そこに「ムナーリ」展の図録が掲載されていました。この展覧会はいくこ
とができなかったせいもあって、図録ぐらい購入してはと考えていましたが、いまだに
果たしておりません。
 坂根さんの「メディア・アート創世記」には、ムナーリとの出会いのことを、次の
ように記しています。
「東京本社へ移ってすぐに担当したのが、1960年春に東京で行われた世界デザイン会議
だった。いま思うとわたしがその後、芸術と科学の境界領域に関心を高めるのに、さら
に大きな影響を与えらた出来事であったように思う。・・・
 世界デザイン会議には、各国から著名な建築家、グラフィック・デザイナー、・・
など幅広い領域の人々が東京に集まって、今後の世界の都市環境からさまざまな分野の
デザインのあり方についてまで論じ合い、作品や計画案を披露した。
 海外からはハーバート・バイヤーやチャールズ・イームズブルーノ・ムナーリなど
著名なデザイナーが来日した。」
 ムナーリさんとの出会いは、この時であったようです。
「後にブルーノ・ムナーリをミラノに訪ねて、氏の幅広い作家活動を取材したのも、
東京・伊勢丹で行われたムナーリ展で感動し、世界デザイン会議やその後の京都での
デザイン会議でムナーリの好奇心あふれる遊び心や作品に触発されたことであった。
1985年に東京・青山こどもの城にムナーリを招いて、ワークショップやシンポジウムが
開かれた際には、女優の岸田今日子さんといっしょにシンポジウムに参加して、そんな
人柄に再度触れることができた。」
 このムナーリさんによる「プレブック」です。
 もともと、こどもが最初に手にする本のかたちになっているオブジェですが、この時
のこどもは文字が読めないので、当然のことですが、文字はプリントされていないので
あります。
 この「プレブック」は、12冊の本のようなものがセットになっています。

 これがシリーズ全体の表紙のようなものでしょうか。これの下部には、次の印字が
あります。
「 Twelve little books of paper, of card, of cardboard, of wood, of cloth,
of wettex, of flisellina, of transparent plastic
each with a differrent binding 」

 これにうつっているのは、木でできたもの、ビニル製のもの、フェルト製のものです
が、木が三枚の板が、あらい紐で結ばれていました。
 そういえば、最近は、幼児向けに手作り絵本で、このようなものが作られているの
を思い出しましたが、あれのルーツはムナーリの「プレブック」でありましたか。
ちなみに全12冊がセットとなっている「プレブック」の気になるお値段はというと、
これには17100円という値札が貼られていました。これを購入した人は、日本にどのく
らいいたのでありましょうか。