ブロンテ 実生活の視点 9

 「ブロンテと芸術ー実生活の視点から」に収録されている佐藤郁子さんの論文
「ブロンテとレース」は副題に「シャーロットとレースの邂逅」とあるのです
が、18世紀からのヨーロッパ大陸での「レース」の歴史について言及されています。
 「レース」で飾ることの意味合いから、それを制作する手法、そしてそれを仕事と
する女性とたしなみとして手がける女性たちの社会的な地位についてであります。
 シャーロット・ブロンテさんは、作品のなかの様々な場面で「レース」を登場さ
せているとあります。
 たとえば「教授」という作品のなかでは、「貴重なレースを受け継ぐ女性やレース
を修理する女性の身分を表す題材としてレースを取り入れた」とありました。
同じく「教授」という作品では、「(作中人物に)様々なレースとの出会いをさせる
ことにより、現実社会の実態や信仰との係わりを考えさせている。さらに高度な
技術を使ったレース編みを覚えようとしている場面では、軽蔑される職業だけでは
ないレースの存在感を認識していることが伝わるのである。結婚で生活と未来が決め
られた時代、より女性らしさを強調し、家柄や財産を見せつけるためにレースを利用
することはより条件の良い結婚獲得には効果的な小道具になることの裏付けのようで
ある。」ともあります。
 見る人が見ると、作中に記されたレースからでもいろいろなことが読み取れると
いうのが目から鱗のような話しであります。
 最近でありましたら、ブランドものを身につけた女性の風俗(産業に従事する女性
にあらず。)を描くことで、時代に生きる女性の肖像を描くという手法がありました
が、19世紀にはそれがブランドものではなくて、高価なレースであったのですね。